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2009年 11月 11日
私が時々取り上げるHフォードのことば
経済的に正しいものは 道徳的にも正しい これは「政府紙幣」発行の是非を考える際に、慎重であるべきという『ものさし』としてご紹介しています。 『新しい価値観』にもとづく『新しい政策』 ttp://koufu.exblog.jp/10985038/ いまだに「足りないなら刷ればいい」という主張をする人がいるのですが、先日の高橋洋一氏などは、その筆頭だったようです。 厳密には高橋氏の言う「政府紙幣論」と、次に述べる「国債買い取り派」とは異なるので誤解の無いように言えば「政府紙幣論」は、日銀を通さずに紙幣をジャブジャブ流してデフレを緩和するという考え。 対して勝間氏や小野会長は「お金を増やす」目的は同じでも、それを「日銀に買い取ってもらう」ということで、まだ「ルールに沿っている」とは言えるでしょう。 その「国債買い取り派」の話題ですが、神州の泉さんのところでご紹介されている日本経済復活の会の小野盛司会長が、勝間和代氏の主張を「画期的なこと」とおっしゃって持論を補強されている文章がありますが、少しひっかかったので取り上げたいと思います。 まず押さえておくべきポイントとして「お金を供給する」が「デフレの抑制になる」とはイコールでは無く、むしろ「その供給されたお金がどのように流れるか?」によっては、それこそ逆に『富の集中』などになってしまうかもしれないので注意が必要です。 (つまり借金の使い道を明確にして「どういう政策にお金を使うのか」とセットで議論しないと単に「足りなければ増やせばいい」というだけでは、絶対に良い結果にはならないと思います。) そこで、本題 「勝間和代氏が管直人大臣に「お金を刷ってデフレを止めよ」と進言(小野盛司)」 ttp://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2009/11/post-4d06.html このエントリーの菅直人副総理との対談から勝間氏のポイントを抜き出すと ・モノに比べて、貨幣が足りない状況なので、国債と引き替えに貨幣を発行し、その国債を日銀が引き受けて、市場に供給する。その収入を、環境、農業、介護など、いま投資が必要な分野に投入します。 ・すでに実質ベースで見ると、国債の利率はとてつもない高いことを理解すべき。利子率は名目ベースに物価の上昇・下落を合わせた実質ベースで見ないといけない。脱・デフレ対策を行えば、実質ベースの利率は下がる可能性が高い。 この対談に関して「マスコミ」の受け止め方は >勝間和代さんのデフレ退治策、菅直人副総理は納得せず(毎日) という印象を持ったようです。 (というか、マスコミは「慎重派」のほうに近いのかな?) 対して、評価する小野会長は ーーーーー 管大臣は、この提案が魅力的だと言ったが唯一の懸念材料が金利が上がるということのようだ。管大臣には是非、国債発行残高と金利の関係のグラフを見て頂きたい。過去の政府はどんどん国債を発行したために国債残高は増える一方であることは誰でも知っている。その結果、金利はどうなったかというのを示したのが次のグラフだ。誰が見ても下がり続けていることが分かる。つまり、国債を増発すれば金利が上がるというのは日本経済には当てはまらない。 ーーーーー ということで、次のグラフを根拠にしています。 【長期金利の推移】 ーーーーー 本当に、金利が上がってくれば、つまり国債価格が下落してくれば、日銀が買い支えればよいだけである。米国も世界大恐慌の後の大不況からの脱却と世界大戦の戦費を捻出するための国債の大量発行で国債価格の下落を防ぐために1951年まで国債価格維持政策を採ってきた。日本の長期のデフレ状態から脱却をするには、例えば金利が2%を超える長期国債は全部買い取ることにすれば、当然金利が上がらなくなる。その環境の下で大規模な国債発行を行って、国民のためにお金を使えばデフレを脱却することができる。これこそ正攻法によるデフレ脱却だ。 これに対して反論がある人は、具体的な数値を合理的な理由を添えて示すべきだ。例えばこれにより円安になるというなら、何兆円の国債発行で対ドル円相場がどれだけ下落し、それにより、輸出入にどれだけ影響があるとか、経済モデルに従って具体的な数字を示さねば反論にならない。この問題に関して、まるでトンチンカンな発言をする国会議員が多い中、菅大臣は聞く耳は持っているようで、心強い。 ーーーーー >反論がある人は、具体的な数値を合理的な理由を添えて示すべき >経済モデルに従って具体的な数字を示さねば反論にならない。 私は「反論」というレベルの話ではありませんが、上記の文章とグラフを見て「アレッ? これって・・・」と、むしろ素朴な疑問は持ちました(笑) 小野会長の説によれば、グラフのカーブを根拠に >国債を増発すれば金利が上がるというのは日本経済には当てはまらない。 ということのようですが、私は別の要素で『似たカーブ』が思い浮かびました。次のグラフを見ていただいたほうが早いでしょう。(日銀発表のデータによる) 【長期金利推移グラフ】 小野会長の示したグラフはこの図の「10年国債利回り」であり、ピンクの丸で囲った部分が同じなのが分かると思います。 ではもう一つのカクカクしたほうは・・「政策金利」つまり昔の言葉で言う公定歩合(「基準割引率および基準貸付利率」と呼び名が変わったらしい)の推移ということです。 ご存知のように我が国では長期にわたり『(実質)ゼロ金利政策』がとられ続けています。これは1998年ー1999年からです。 つまり小野会長の言うような「国債の増発の影響を受けるかどうか」の要因ではなく、このグラフの推移は、単に「政策金利に連動している」だけなのです。 どういうことかというと「国債を増発しても、我が国では金利は上がらない」・・とは言えない・・ということです。 あえて私がこのことを指摘するのは、国債を日銀が買い支えしたり「政策金利」をギリギリまで下げているにも関わらず(実質ゼロ金利政策に近いのに) も・し・も 金利が上昇し始めたら 『目も当てられなくなる』 ということです。 このように勝間氏や小野会長の「デフレ脱却の特効薬」と考えている「国債を増発して日銀に買い取らせる」というのは、危険な状況に陥る恐れもあるということは指摘しておきたいと思います。 ◎その他の「金融政策」について そういえば、先月末に >日銀:社債・CP買い取り、年末で打ち切り 政策決定会合 こういう話題がありました。 ーーーーー 日銀は30日、金融政策決定会合を開き、金融危機対応策として、企業の資金繰り支援のため実施している社債やコマーシャルペーパー(CP)の買い取り措置を、期限の年末で打ち切ることを決めた。昨年9月のリーマン・ショック後に導入された緊急対策を打ち切るのは初めて。政策金利(無担保コール翌日物)を現行の年0.1%に据え置くことも決め、超低金利政策を継続して景気の下支えを図る方針だ。 ーーーーー これは、日銀が企業の資金繰り支援のために、社債などを買い取るということで、一見「経済対策」っぽく見えるのですが、“さりげなく”打ち切っているのは、実はモラルハザードを招きかねない事態だったからです。 現に、9月の金融政策決定会合で、 >高格付け企業のCPの発行金利が国債を下回る「官民逆転現象」を受け、一人の委員は「政策効果に行きすぎの面がある」と指摘した。 この「官民逆転」というのは、つまり「安い金利の社債でカネを調達し、金利の高い国債を買う」ことも可能ということです。つまり、利益優先の企業が社債を発行した分を、そのまま国債購入に回せば、これほどラクな「儲け方」はありません。 「役割を終えた」というよりも「想定外の現象」というのが正直な所でしょう。 ゼロ金利政策 政府紙幣 国債の日銀買い取り CP、社債の買い取り このような政策は、あくまで「飛び道具」なので『緊急対策』として一切やるなとまでは言いませんが、 『極力、早期に通常の状態に戻す』 これを大原則/最優先にすべきです。 いわゆる「(無担保の)政府紙幣」や「(江戸時代の)徳政令」など、それが甘い汁だからこそ何度も繰り返したくなるという誘惑になり、モラルハザードが起きて破綻する危険を孕んでいます。 「ゼロ金利政策」も、一度採用するとなかなか抜けられなくなり、いざ金融危機が起きた際、我が国の緊急処置の「選択肢が無かった」というのが実情なのです。 普通なら緊急利下げなど金利のコントロールによって、時間稼ぎをするのが『常道』ですが、我が国は(ほぼ)ゼロ金利のまま来ていたので・・・ ということで「トリッキーな手法」や「解釈の誤ったグラフ」による『政策提言』というのは、注意が必要です。
by mojo_on
| 2009-11-11 12:37
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